「ジョニーは戦場へ行った」を観て/平瀬たかのり
 
 塹壕に飛び込んだジョーは
 爆撃をくらって
 目も鼻も口も耳も吹き飛ばされ
 運び込まれた病院で
 両手両足切り取られ
 意識ある
 ひとくれの芋虫男になった

 後頭部で叩きつけるSOS
 もう生きたくない! ぼくを殺してくれ!
 メリークリスマスを胸板に綴った
 優しい看護婦へ送ったモールス信号

 けれど、
 システムはそれを許さない
 ジョーは生き長らえさせ続ける
 実験台として

 戦争映画を観る 爆撃の場面を観る
 そのたびに
 塹壕に飛び込むジョーを思う
 すさまじい火炎の下、何人のジョーが生まれている?

 それがぼくにとっての戦争――
 いや、ちがう
 あだやおろそかに戦争なんて書くな
 ぼくが観たのは戦争映画だ
 フィクションにすぎない

 けれども
 ダルトン・トランボはきっと
 これからもぼくに問いかける
 モールス信号で問いかけ続ける

 おまえはどれほどの覚悟でシナリオを書いているのだ?

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