薔薇の泉/
塔野夏子
いつしか時は満ちていた
いつしか雨はやんでいた
いくつかの傷はまだ響きやまないけれど
しずかに吹く風が告げている
ひとつの旅が終わったのだと
振りむくにはまだ重すぎる日々も
見わたすにはまだ遠すぎる日々も
いまはただそのままに
たどりついた薔薇の泉のもとで
寄り添い憩う
星々が夜空いちめん
紡ぎ交わした夢に守られて
あらたな旅がはじまるまでの
つかの間のこの夜を
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