虫の音/
リリー
昼間は 陽射しにためらって
雑木林の奥に潜んでいる
秋が
しのび足で
次第に満ちて来る夜
軒ばの低い 村の細道
懐中電灯をてらして歩くと
いやに星がきれい
灯を消して仰ぐと
生命が ふと重たくて
ひそかに 胸のうち深く
響く 虫の音
まるで天地に
唯ひとり
わたしだけ
に 聞こえている様
目をとじてみると
なりわいの苦しさなど何もなく
今日生きている
虫の音が
心にしみ入ってくるのです
あなた
きこえませんか?
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