秋の午後/由比良 倖
 
秋の午後には、詩を読んで、
ギターを弾いて、風景も、
人の挙動も、忘れたい。

中原中也だけを読み、
ニック・ドレイクだけ聴いて、
全てを捨てて、死にたいのです。

秋の午後には、音楽と、
詩と本だけを、友にして、
ただ空っぽに、死にたいのです。

ただ空っぽの、部屋があり、
ただ空っぽの、僕がいて、
ただ空っぽに、死にたいのです。

秋の静かな午後、僕は、
ギターを弾いて、街なんて、
人類なんて、忘れたいのです……
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