『細息』『ささめいき』/武下愛
お昼ごろまろやかな粉のような白い雪が降って、触れる度に、溶けていく。冷たさに、濡れる。
霧になった雪に触れて増していく色並みが加えていく、濃さ深さ。街並みが輝いている。息を静かに繰り返す。吐息の白さが。告げていないだよね。だって季節は夏で、初夏なんだろう。まるで何事もなかったかのように私の横を通り過ぎていく。沢山の雪崩れるほどの人がいる中で。見てきたものが違うからこんなにも感じ方が違うんだと空を見上げた。細雪が目に入って痛い。でも決めた事だからここで待ってるのを決めたのは自分なんだ。他の誰でもある人々の言葉を受け止めるうちに。何もかもが世界が熱い中。私はどこにいても、どこに行っても寒さが離れなくなって。動けなくなったのではなくて動かなくなった。一歩も。
五感で吸い込み続けて、吐き出すのはごくごく僅かだよ。呼吸にもならない白くもならない息を、そっとはいた。いままでの自分って名前が付いている。ささめいき。作品たちがささめいきではなく、温度を伴うように。この雪の世界に願いを込めた。ここは季節感のない私だけの世界。私は、私に願うのだ。まい進するために。
戻る 編 削 Point(2)