少女/リリー
女が 路地裏に居るのを見た
雨が 降るのを見た
ライトがいくつか点いて
薄暗さの充ちてくる
音の ころがる時
夜の始まるのを見た
おかもち提げた女子高生が
数軒の飲み屋や お茶屋さんへ
出前のグラスと珈琲セットをひきに回る
「まいどおおきに!タナカコーヒーです。」
雨おちてきた先斗町の細き道
近くを流れる鴨川べりに
晩夏の陽
暮れはてて
豊かなる頬には
十代の血管のたぎり
歓びの日に
悲しみの日に
髪一筋の狂いが 全てを狂わせる
あやうさと共に
燃えたぎるもののあった時代
星を数える
まだ 稚い瞳の微笑みには
月の夜の 影も
ひたひたと
近づけども追いつけず
まるで線路わきに咲く月見草の
様だった かも知れない
一見移り気な少女が、胸に秘めていた頑固さ
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