小景/リリー
 
 水死人の捜索船が
 大声でどなり合い
 そして 声の沈まり
 ぞよめく


 夏も終わって
 浜辺も空虚で
 そのさざめきが
 かえって救いの様だ

 この付近の人々には
 何の縁結のない
 孤独な人の果だというのに

 夕焼けのかげりの中に
 ほうけたトンボの羽の色
 とつぜん 湧き出た銀色が
 風にも
 型崩さず ゆれた

 トンボの羽が空に映って
 何て冷たい
 帰り道の 草むら


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