夏野菜さま/千波 一也
水分が奪われてゆくので、
たすけてください、
夏野菜さま。
あなたがそんなに潤うわけは、
あなたが夏を生きるため、
単純明快です。
なれど、
お恵みください、
干からびそうな命を憐れんで、
かじらせてください、
夏野菜さま。
お日様のまぶしさを喜んだり、
迷惑がったり、
カラフルなのが、
私たち。
熟す寸前をもぎ取ったり、
食べ頃には遠いものをもぎ取ったり、
カラフルなのが、
私たち。
自由気ままな生き物は、
さほど珍しくはないはずですが、
自由気ままの意味が、
少しずつ変化している気がいたします。
私たちを流れる水分は、
果たしてどなたを潤すべきか、
ご教授ください、
夏野菜さま。
その前に、
干からびてしまっては困るので、
いただきますね、
夏野菜さま。
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