夏のメモリー[まち角22]/リリー
 
 
 お盆休みに入る前日
 同僚と 飲みに行く京阪電車は
 県内で有名な進学高校のある
 最寄駅で停車する

 車窓から 何気に眺める向かいのホーム
 線路を跨ぐ距離で目が合ってしまう
 男の子 

 彼はベンチで 長い脚をひろげ
 大きなお弁当箱を片手に
 私から 視線逸らすと
 箸を動かす

 軽くウェーブする黒髪が優しくかかる額に
 秀でた眉
 きらめいている目を
 お弁当へ落とす 

 「お母さんがクーラーボックスに入れて、お弁当二つ持たせてるんちゃう?」
 「うん。塾行くと遅くなって、お腹空くしかなぁ。」

 両腕まくった 細長い躯の白シャツ
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