美味しい食事/
たもつ
カニ味噌を泳ぐ
珍しい形のしゃもじが
私をご飯にする
世界、と口にしてみる
人口よりも多い
イクラを数えながら
父は余生を送った
美味しかった、とだけ
書かれた遺書を見つけて
母は泣き崩れた
二人にしか
わたらないことがあった
夜中にふと目が覚める
昨晩の夕食からも
明くる朝の朝食からも
ここはとても遠い
(初出 R5.8.9 日本WEB詩人会)
戻る
編
削
Point
(7)