春霞/松嶋豊弐
薄刃の夜(よ)に藤は散る。
狂える鳥居の向こうに永久(とこしへ)が眠りゆく。
「糸切り鋏が紡ぐよう、傀儡が回るよう、
うなされる夜の夢は誰にも分かれしまへんよってに」
お歯黒の笑みを残し、巫女は消えた。
あゝ、我が背(せ)よ。
生皮剥がされた我らはけだものでおまっしゃろうか。
おゝ、帝国の遠き星よ。見てはりくださりませ。
人の過ちにより、甘う腐りゆくが如く遂に西空の黄昏は潰えます。
息も耐えだえに、真(まこと)が燃やされ溶けていく。
この世すべては我らが敵(かたき)。
愛おしみの心は、流した涙は……血よりも濃い。
怨みも憎しみも枯れ果て、{
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