落椿/リリー
靴音が恋を追いかける
パダムパダム と
絶え間なく追いかける
その 切なさ
激しさから
逃げようとするのだが
もはや息が切れてしまった
恋はほのぼのと燃えて
尽きる事のない声を
反響させる
ゆれ騒いでいた大気が突然
凍りついた様に停止する
すねた一輪の椿は重たく落ちた
雨の夜に
靴音が恋を追いかけると
その都度 空が少しずつ遠くなるので
落椿は あかい唇となって
舞い上がる
見てごらん
今その紅い唇は
曇った 都会の空を覆い
星をかくし
大空をぬりつぶしていくだろう
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