ハード・レインを待ってる/ホロウ・シカエルボク
 
れに弱くなっただけなのかもしれない、自分が指先ひとつ動かすことなく快適な温度を手に入れる、そんな暮らしに慣れ過ぎただけなのかもしれない、ゴキブリが一匹、本能だけを見つめて食料品店の壁を歩いている、上るつもりなのか、下りるつもりなのか、それとも、忍び込むことが出来そうな亀裂を探しているのか…あいつには暑いことや寒いことなど関係ないだろう、そいつを見つめているとなぜかそんな気がした、そうさ、人間は…本能を忘れかけているポンコツどもは、必要以上に弱ることを恐れるんだ、そしてどんどんどんどんナーヴァスになって、思っていたよりも酷い壊れ方をしたりするのさ、恐怖は―恐怖は人間に何も考えないことを強要するんだ、
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