二人酒[まち角20]/リリー
十九時半は回っていただろう
仕事帰りでもなさそうな洒落たポロシャツの中年男が
客のまばらなカウンター席で飲んでいた
そこは、いつもなら私の指定席だったのに
仕方なく隣で
梅酒ロックを傾けながら
タコとタマネギのイタリアンサラダを楽しみながら
揚げ出し豆腐を待っていた
何気に見る彼のロックグラス
角ばった氷と 未だ三分の一程しか減っておらず
二皿がすでに食べ切られている
カウンターへ肘をつきスマホ操作していた彼は
立ち上がり
私の背後を通るとお手洗いへと
飲みかけのグラスの氷が溶けかけて
こめかみに うっすら送られてく
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