小さな部屋にて/塔野夏子
 
君が「孤独」と名づけた場所
そのさらに奥に
小さな部屋がある

くすんだ象牙色の壁紙
いくつかの黒ずんだ木の棚
そこには本 小函 硝子壜
円い置時計 何処かの土産といった風情の
人形や動物の置物 地球儀……
壁にかけられた絵の中には
円い緑の草の丘とその上の緑の樹と

  いずれも見憶えがあるような ないような

褪せた薔薇色の肘掛け椅子に
君は不思議と心地よく坐っている
君の前の深い色の木目が美しいテーブルの上には
紅茶 果物 菓子

窓の景色は
見るたびごとに違う
この小さな部屋に似合うような
ひっそりした庭の眺めだったり
壁にかけられた絵とそっく
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