此処/
夏井椋也
駄々をこねて
手に入れたものは
すべて行方知れず
罪の数と罰の数が
同じでないと知ったのは
ずいぶん後になってから
誰かのために摘んだ
花の毒に侵されて
薬指を枯らした
逃げ回った挙句に
恐る恐る振り返れば
自分の影ひとつ
夢も持たず
約束も果たさず
此処にいる
あなたが
手を放してくれないから
辛うじて
此処にいる
戻る
編
削
Point
(8)