此処/夏井椋也
 

駄々をこねて
手に入れたものは
すべて行方知れず

罪の数と罰の数が
同じでないと知ったのは
ずいぶん後になってから

誰かのために摘んだ
花の毒に侵されて
薬指を枯らした

逃げ回った挙句に
恐る恐る振り返れば
自分の影ひとつ

夢も持たず
約束も果たさず
此処にいる

あなたが
手を放してくれないから
辛うじて

此処にいる



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