聖なるもの異様なもの/ひだかたけし
 
潮騒の浜辺に無数の小蟹の赤々と横走り

懐かしい原初の磯の香に包まれ、

聖なるもの 降って来る
異様なもの 降って来る

独りの人 思い出の予感に打ち震え

記憶の奥から取り出されたもの

どうにも充たされない想い抱え、

潮騒の浜辺に遊び戯れながら

無数の小蟹の赤々と浮き上がり

憧れの原初の磯の香に包まれ

いつしか時空の消滅して

聖なるもの 降って来る
異様なもの 降って来る

思い出の予感に打ち震え

波の打ち寄せ引く反復に

記憶の億から取り出され

独りの人に 独りの人に

透過され到来する

聖なるもの異様なもの、

潮騒の浜辺に無数の小蟹の赤々と横走り
潮騒の浜辺に無数の命の赤々と生き募り


















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