夏を捨てたら/暗合
夏が来るのだろう、と梅雨だから思う。ジメジメしている。どこまでも続く夏に僕の、ニンゲンとしての価値、なんかも薄く薄く引き延ばされてしまうのだと思う。遠く、青春だとか目を細くして、笑ってやるさ。笑わずにして何をできるの? 何もできないとしても、誤魔化せなけりゃ死んでしまうよ。
きこえますか。空が青くて、海も青いなら、青くないのは我々でしかない。美しいものは常に遠かで待っている。永遠に我々を待っている。小人たちに哀れみを与えては、自己陶酔の果て、僕を忘れてしまったものたちよ。しかし僕はもう捕まってしまったのだ。
夏を捨てたら、たまに海が恋しくなるだろう。爆発を遠くで眺めるのが花火であって、郷
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