アイソニアの騎士、立つ(二)/朧月夜
憤るアイソニアの騎士を、盗賊ヨランは窘めた。
「騎士様、もしやあなたは祭祀クーラスを殺すつもりですか?」
「奴は、剣の切っ先でいくら八つ裂きにしても足りぬ。
幼いイリアスを誘拐するなど、為政者のすることではない」
「為政者とはあらゆる可能性を考えるものですよ。
イリアス様を誘拐したのも、その一環です。思うに、
祭祀クーラスは深謀遠慮をその心に巡らせているのでしょう。
軽はずみな行動は慎むべきだと思います」
「飄々としたお前が、なぜこの時には慎重になる?」
「イリアス様が、フランキスに殺されないとも限らないからです」
「おのれ、フランキスめ。一度はクーラスを裏切ると誓った男が……」
「フランキスは実際家です。イリアス様を殺すことが理にかなっていると思えば、
その刃を向けるでしょう。そうなってからでは遅いのです」
「お前は、フランキスとイリアスの行方を知っているのか?」
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