雨の街と夜/木立 悟
夜をのぞき込む夜が
少しだけ喉を痛くする
壁の虫はどこへゆくのか
おまえはおまえの夜をゆくのか
朝に張り付いた昨日の雨が
陽に刺されては落ちてくる
ひとつの爪弾きが伝わりつづけ
小さく小さく曇を分けゆく
風に撒かれる光の針が
午後の音を消してゆく
庭の奥の 陽の届かぬ場所の
小さな音を見つめている
縦のオーロラ
流民の地図
偽の美しさの迷路から
誰も出て来ぬまま日が暮れる
評価されぬものほど興味深く
時の垣根を越えてゆく
どこにでもある青と白
同じもののない青と白
苔むした岩の門を
雪のかけら
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