遠く、遠い……/朧月夜
遠い遠くの、あれは海?
わたしの心を満たしている。
それは快楽にはほど遠く、
何か罪めいた予感に満ちている。
あれは海? 遠く遠い。
砂浜に寝転んで昼顔の花を見ながら、
いつか、いつだったろうと
思っていた。
風が吹く。通り過ぎる。
わたしの熱を奪ってゆく風。
もう捨て去ったはずなのにと、
誰にともなくつぶやいて。
あれは海? 遠く遠い。
潮騒の音が心を甚振る。
いつか切符もなく駅を降りたよね。
そして、海岸を進んでいった。
季節はやはり七月で、
肌寒い風が服をゆらした。
そのまま次の駅までと、
歩を進めていったのは、わたし。
もう思い出
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