一筋の汗[まち角17]/リリー
 
 蝉の声に讃えられている
 誇らしげな 夏
 そして 私の傍ら走り去る
 一陣の風

 人通りない交差点
 銀輪またがる その人の姿を目にした途端
 足が止まる

 肌に まとわりつく湿気含んだ日差し
 七月の朝

 その人は乱れた茶髪なびかせて
 ピンクの口紅 ヌードメイクな化粧顔が
 ペダル漕ぎながら風を身体に浴び
 心地良さそうに

 豹柄キャミ一枚の 胸元真っ平
 骨ばった いかり肩
 小麦色した素肌の大きくて広い背中
 ハンドル握る筋肉質の太い腕
 デニム地の超ミニスカートからは
 逞しい脚のライン

 私の目はスカートの蔭をとらえてしまう
 手にするハンカチで額、拭う
 見返る その人の後姿たちまち消えゆき

  (まるで水平線へ
   一直線に打ちこまれて行く光線のように)

 歩き始めると
 背中に一筋 流れるものの感触あり
 生暖かいざわめきの うず潮に
 脳天包まれる


 
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