酒房の話/リリー
 

 ある女が 酒房に惹かれ
 やかましいその片隅に
 毎夜坐っていた

 沈んだ目が時折光る時
 女はカリカリと氷をかみ砕き
 強い酒に挑んでいる様に見えた

 何日かすぎた頃
 酒が 女に惹かれ始めた
 この女こそ
 
 限りなく優しいくちづけで
 酒は女に求愛した

 ある夜ついに
 酒は女を我が物とした
 女の冷たい体を抱いて
 酒は冬の夜空に昇っていった

 その後 酒房は
 いつしかさびれた
 あそこは酒がない
 誰もが そう言った


 
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