鮭肉祭/野澤 尚也
 
生きていくのを待って
三年の旅を終え
生命と性をつなぐ目的で
故郷に帰ってきた鮭

ああ僕たちにはこんなにも
鮭が必要なんだろう
塩漬けの目を伏せる

美しい川の中に暮らし
食事と排泄をしながら力強く育ち
必要ない量の体を切り裂かれる
人間は物語に傅く

川の幸海の幸山の幸付け加える
今日は直視できずまぶたを閉じる
水の音骨の音血の匂い目玉の声
いただきますと甘い笑顔が調味料
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