遠い夏/リリー
祇園の石段の上から
灯の街を眺めさせたいと
私の腕をむりやりつかんで
つれて来た あなた
遠い異国の昔
王宮の血汐がはねあがった日
革命の巴里祭
そして日本では祇園祭りの近い日
きれいだ
おはやしがきこえるね
と、その次
好きだ 大好き
屋上ビヤガーデンのちょうちんも
ほこの上に飾ったちょうちんも
ほんの少しの風を嬉しそうに受け入れている
なのに
あなたの声は
私の耳からどこかへ消えた
石段の上は いやしに夜が濃くて
ぼんぼりの光の輪がびくびくとしている
戻る 編 削 Point(8)