南の果の岬/リリー
既に色褪せて重たく落ちている花片を
踏みながら歩む林の中は
もう黄昏ている
椿林の木立
わずかな隙間から
聞こえる波濤のどよめき
腰をおろしてみなさい
湿っぽい土の下から
遠く渡って来た潮の
たどりついた疲れのにおいがする
だから
椿があんなに
木から落ちたとたん色褪せるのだ
風の匂いをかいでごらんなさい
南の果ての風はどんなに
なつかしいか
それは疲れた嘆きの香がするからだ
椿林の下の小径を一人歩いてみなさい
鳴っている
うごめく大気にすいこまれるような
この生暖かい骨肉の確かな鼓動が、
波
風
そして椿の林
ここが四国の南端なのだ
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