永遠には生きられないけど/ホロウ・シカエルボク
 
った。遊ぶ金の為ではなく、病院に通うための金をもらうために仕事は続けなけれなならなかった。そのうちに眠れない寝床に耐えられなくなり、深夜の街を彷徨うようになった。それは次第に範囲を広げ、山に入り込んだ。この廃墟の中に足を踏み入れたときに、何かが自分の中で切れた。細い糸が切れるみたいな微かな感覚だった。ああ、もうここでいいや。そのまま地面に倒れ、目を閉じた。生まれて初めての、そして最後の深い深い眠り。その瞬間はなんだかとても幸せだった気がする。「馬鹿だったんだな」目を覚まして俺はそう言った。「だけど、辛かったろうな」俺は彼女の頭をよしよしと撫でた。さぁーっと形が崩れ、髪の毛や頭皮、筋肉だったものが風に流された。何も知らなかったままの頭蓋骨がどこか滑稽な様子で露わになった。「まあでも、ずっと楽しかっただけよりは良かったんじゃないか」何か中途半端な気がして、そのまま全身を順番に撫でてやった。ふふふ、という笑い声が聞こえた気がした。廃墟を後にした時、駐車場以外を覗いてないことに気付いた。でも、引き返す気にもならなかった。あの子はもう少し眠りたいだろうから。


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