メシアふたたび。/田中宏輔
はなかったのですもの。
ですから
懐に入れておいた鍵を落とされたってことを耳にしても
ぜんぜん、不思議に思わなかったのです。
ペテロさまは、イエスさまに内緒で
(といっても、イエスさまはじめ
天国じゅうのものがみな知っていたのですけれども)
合鍵をつくられたのです。
しかし、これがまた鍛冶屋がへたでへたで
(だって、ヘパイストスって、天国にはいないのですもの)
ペテロさまが、その鍵を使われて
天国の門の錠前に差し込んでまわされると
根元の方で、ポキリってことになりましたの。
で
それ以来
天国の門は開きっぱなしになっているのです。
あ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(12)