メシアふたたび。/田中宏輔
 
ツン

切ったのです。
スッドーダナの息子、ブッダは目が悪かったのです。
遠見のカンダタは
シッダルダ好みの野生的な感じがしたのですが
近くで目にしますと
なんだか
ただ薄汚いだけの野蛮そうな男なのでした。
ブッダは
汚れは嫌いなのです。
それで
カンダタの代わりを釣り上げるために
釣り糸をいったん切ったのです。
たしか
このようなお話だったと思います。
仏教においても
顔の醜いものは救われないということでしょうか。
わたしには、たいへん共感するところがございました。
アクタガワの視線の行方を追いますと
そこには
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