小石/リリー
 
 日本海に春の来た時は
 カラカラ カラカラ と
 生命ない小石が激しい息吹をもらす

 波 寄せる毎
 丸くなり
 妙に乾いた音たてて
 踊り上がりながら 転げこむ

 海の碧に惹きつけられて
 果の黒さを知らず
 その水底の深さも知らず絶え間なく
 転がりこみ
 橋立の湾を出て
 果なく続く潮を思うのか

 やがて
 マリンスノーがお前の上に降りつみ
 異国の船のかけらや
 真白な美しい人骨にかこまれて
 どこかで休息する日まで
 歌いつづける

 静かに 静かに今、 
 目をとじているのに

 生命ないものを見る私の命
 終えた後 幾万年を 
 お前は歌いつづけるのだ


戻る   Point(3)