新世界にて[まち角6]/リリー
 
 
 ジャンジャン横丁を
 制服姿の女子の二人乗りが突っ切って行ったのは
 もう十数年も前になる

 後部に座る子の脚が長いのか
 見送ると大胆に
 自転車の幅からすんなり伸びる白が左右へ
 はみ出していたっけ

 そんな事が忘れられない新世界

 通り連なる飲み屋の店先には営業中の看板
 午前十一時前から集うお客さんの笑い顔
 そんな下町の躍動を、初めて見た

 エスコート役の同級生がお手洗いを借りに
 パチンコ屋へ入る
 通りで一人待つ私は
 まばらな客のいる店内を覗き
 中の出入口付近の台へ座っていると
 正面扉のガラス戸越し
 キョロキョロ見回す彼を見つけた

 その姿を見物する
 妙に落ち着いた胸の中は擽ったさと
 素直に満ちてくる楽しさが一ぱいに坐を占めた
 新世界
 あの日 お空は晴天だった



 

 
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