一夜と一万年の夜/AB(なかほど)
祈るべきことが多すぎて
だから一日が終わるのだろう
そろそろお釈迦様が袖を振る頃だ。と言われ
てもう、八百と二十余年。それから、最期の
お裁きがあると言われてもう、千と十余年。
神も仏も随分と寛容なのに、僕等は相変わら
ずの他愛のない事で目くじらを立てている。
他愛のない事で、泣いて怒って口笛吹いてし
まおうか。それが、相変わらずの幸せ。
一人と一人はとても情けなく、とても弱く、
とても寂しがりやで、だから、とても優しい
んだね。
その一人の君が、一人の誰かを愛するとき、
ない袖も振れるのだろう。それは全てを薙ぎ
払うのではなく、例えば優しく頭を撫でるも
ので、一人が一人のために最期の日に言い渡
す言葉も、見放すのではなく、優しく抱きし
めるためなんだろう。
おうい
って遠くから手を振る君に、僕は、振る
袖もないのだけれど、気持ちいっぱいで振り
返す。
祈るべきことが多すぎて
だから
一日が終わるのだろう
眠るってのは
そういうことかい
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