ひとつの歌/リリー
朝のスープの
セロリの香り
悲しかった様な気がする昨夜の夢を
おぼえていない 朝の靄
一匙ごと かるくスプーンを動かしていると
一口ごと すくいとられて胸の中へ流れこむ
人参 たまねぎ 春キャベツにベーコンと
セロリの茎の爽やかな歯ざわり
そして手に取るスマホで
ライン送信する「おはよう」
あなたからの返信がすぐに来なくても
後片づけを始めたら
朗らかなリズム見つけて
ひとつの歌を 歌うのです
ひとつの歌は 一人の歌
二人で分けようと思えば
歌は形をくずし
二人の唇にのらないで何処かへ消え去る
ひとつの歌は
一人で抱くものだから、
あなたが恋しくなるのです
戻る 編 削 Point(4)