ひとつの歌/リリー
 
 朝のスープの
 セロリの香り

 悲しかった様な気がする昨夜の夢を
 おぼえていない 朝の靄
 一匙ごと かるくスプーンを動かしていると
 一口ごと すくいとられて胸の中へ流れこむ

 人参 たまねぎ 春キャベツにベーコンと
 セロリの茎の爽やかな歯ざわり
 そして手に取るスマホで
 ライン送信する「おはよう」

 あなたからの返信がすぐに来なくても
 後片づけを始めたら
 朗らかなリズム見つけて
 ひとつの歌を 歌うのです

 ひとつの歌は 一人の歌
 二人で分けようと思えば
 歌は形をくずし
 二人の唇にのらないで何処かへ消え去る

 ひとつの歌は
 一人で抱くものだから、
 あなたが恋しくなるのです
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