アイボリーの椅子/あらい
 
臭い足、白くブヨ付いた躰を水底から引き上げる瞬間、
漏れ出した嗚咽が、そのうちがわから垂れ流した啼泣になりました。だれも振り向
かないし通り過ぎていくばかりで、擦り抜けていく光も闇も、灯花した甘さで、頬
に手を置いて肘をついて、ぼんやりとみているだけなのです。

スプラッタ栄華の幕間にある、この無声劇の感激、いまピンホールカメラの風切り音
(みみもとで囁く)目眩が引き起こした白昼夢に。 体ごと引きづられ ほらそういっ
たオヤスミなら誰も咎めないもので 堅い長椅子に随分座り、そこに(あいぼりーが)
ただそこにあり、蟻でも潰してやろうかと認めている。

居るのだろうと思っていれば、それで好いのだろうと深く沈み込む。
長々、烙印を背に、ひとり粉クソにウケている。さみしいヒトが、
個々に、たくさんいらっしゃる、ところだ。

2023-03-24
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