ニュータウン[まち角3]/リリー
仮設足場組立工事が始まると
いつの間にか ダークグレーな防音シートは
しのつく雨に暗く、まるで
封建制度の時代にたてられた牢獄の様に
そびえていた
からだのモヨウが赤と白の網目麒麟が二頭
動かぬまま
それぞれ別方向へ視線を向けている
もう あれから一年半も経つのかと、不意に
私は初秋の夜を思い出す
あの日は月光に星が掻き消され
私の部屋から 向かいに建つマンションの
すっかり消えた窓灯りを一人ながめていた
霧なのか、分からない雲が陸屋根にかかっていて
高層の三階に居ると五階のベランダの側にも
薄く白っぽい、か
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