蛙の王様/リリー
会社の敷地内にある貯水池に
六月の雨が
ひたすらに降る
ヨシが競いあって緑茂らせ
水中は水草の藻やアオコで光も遮断された
濁った水面に 呑みこまれていく雨の音
空もなく 彼方もない騒がしい雨の
瞬間の消滅の連続
白々と
砕けながら散り
散りながら吹き上がって消え
次から次へと消える
六月の雨よ
今 鳴いていないカレは何処からか
ここに立つ私を見つけているだろうか?
今年の桜は早く咲き足早に巡る季節の初夏から
カレの婚活が始まった
昼間っから
低い声響かせてブォーン ブォーン
一度すがた見てみたいものだ
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