黒い光輪。/田中宏輔
たしは、あなたを確かめにまいります。
ふたりの足は、イエスが葬られた墓穴に向かって
いそいだ。
III 復活
III・I 虚霊
墓穴のなかは、狼でさえ夜目がきかないほどに暗かった。
ふたりは、土壁に手をはわせて手探りしながら歩をすすめた。
奥に行けば行くほど、臭いがきつくなる。
──師は、師は、師は、……
マリアは袖口で鼻のあたりを覆った。
「見えるか。」
「ええ。」
マリアの声は、布を透してくぐもって聞こえた。
目が慣れて、少しは見えるようになった。
「師は、師は、師は、やはり死んでいた。」
ユダの身体が頽れた。
と、突然、
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