背中に海/
たもつ
夕方、アイロンをかけていると
背中のすぐ後ろまで
海は来ていた
昔と同じ懐かしい波音が聞こえる
泳ぐことは得意ではないけれど
波打ち際で貝を拾ったり
足の指の間にある砂が
引いていく様子を見るのが好きだった
振り返ると海は無く
あなたがベッドの上で
波音の口真似をしている
おそらくもう二度と
帰ることのできない故郷の海だ
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