甘美トラップ/蝶番 灯
「愛していたのか」
肺が、疎ましい
あの頃
僕はお前を愛していると信じていた
そのつもりでいた
お前は僕を愛していると言っていた
真実と信じていた なのに
もうそれすらどうしようもなくて
棄てるにも棄てられない
酸素を頂戴、1・2・3
嗚呼何故今に成ってこうも悲しくなるのか
僕が選んだ筈の未来なのに 何故どうして
僕を刺すのか
「寂しくないのか」
そうだ、そうなのだ、でも
呼吸を頂戴、1・2・3
嗚呼何故今に成ってこうも泣きたいのか
酸素を頂戴、4・5・6
何時か聞いた 電気を通したお前の声が
真実を頂戴、7・8・9
僕に言うのだ
僕を誰かが愛してくれるのなら、
「愛していたのか、」
10
お前が、疎ましい
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