歩道橋のはなし/たもつ
町の外れに歩道橋ができた
町道の行き止まりのあたりで
民家はほとんどなく
小さい子供がいる地域でもない
町長の公約だから
それだけでできた歩道橋だった
町長は毎朝早くから
歩道橋の掃除をして
手すりを磨くなどしていた
町議会では何度か
その必要性について取り上げられ
税金の無駄遣いだとする
ビラが配られたりもした
その間も町長は寡黙に
歩道橋の掃除を続けるだけだった
ある年、町にちょっとした災害があり
その時に初めて歩道橋が役に立った
地方紙の片隅にその記事が小さく載って
翌日には既に忘れられていた
町長に悪性の腫瘍が見つかり
次回の選挙では出馬しないことが
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