朝市/リリー
 
べてみてと言う

 厚みある皮膚の小さな掌が、手渡した五十円硬貨を
 しっかり握った

 うん。じゃあ今日は、新漬け沢庵と壬生菜にするわ。

 白い手提げのビニール袋へ それをおさめてくれながら
 目を細める 春の日だまりの様な笑顔は
 「姉ちゃん、ありがとうな。また来てやあ!」
 声も 地声になっていた

 帰ったら炊きたてご飯と、この漬け物でブランチといこう
 お味噌汁の具は何にしようか
 考えるだけで
 ほんわかしてくる 心持ちの朝だった



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