楊貴妃桜/リリー
泉涌寺の
楊貴妃観音
のお堂の前に
春の日が暮れて
ほのぼのと薄く紅
開きそめて囁く枝の
下に 微かな響き伝え
息づいている空気が在る
遠い春雷の 音ない震えか
楊貴妃桜の散りゆく今、私の
胸の奥深くに鳴っている 何か
その何かが、やがて噴き出そうと
する熱いどよめきは明日への希いか
無我夢中のうちに自分の姿を見失う幻
かもしれないのに 蒼いのか 赤いのか
色すらも分からなくなって唯泣いてしまう
かも しれないのに、それでもいいのだろう
そう 思う私のつぶやきを反響させて紅は揺れ
うごく光源に楊貴妃観音像のお顔が重なってくる
しっとりとした笑みを私に浮かべてくれていたのだ
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