線と風景/片野晃司
め立てられた無数の弁才天の祠ひとつひとつ、その下から小さなサラスヴァティーが遥々ベンガル湾まで流れていてもいい
たとえば、静かな夜にかすかに聞こえてくる血流のざわめきがだれかに繋がっているなどと考えてみてもいい、だれの内であれ同じような色水がときに荒々しくときに静かに流れているのだから、それがどこかでひとつの流れになっているわけはないと決めなくてもいい
一本の流れがどこまでも続いて、偽史であれ正史であれ、古文書であれインターネットであれ、言葉たちの生も死も戦いも、たかだか一次元のか細い線の上でしかないのだし
詩誌hotel第二章 2021年 (改題)
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