白のメッセージ/リリー
それは直径十二センチのバースデーケーキだった
スポンジ全体に
塗られる甘みをおさえたクリームと
細かいおろし金で削られたホワイトチョコレート
が、一面に振りかけられて
まるで遠い北の森の氷花を思わせる
忘れられないデコレーション
「ノリコちゃんをイメージしたのよ。」
毎年はそんな事をしなかった祖母からの贈りもので
不思議だった
後になって、あのケーキが特注だったことを知る
祖母がケーキをくれた年の晩秋
国道沿いのバス停から山手の高台にある総合病院、
呼吸器科の病室へ
祖母を見舞いに行く私がいた
ビニール傘を開こうともせずに
濡れながら歩いた
小雨降る 暮れ方の道
そうして
祖母は間もなく帰らぬ人となった。
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