白のメッセージ/リリー
 
 それは直径十二センチのバースデーケーキだった
 スポンジ全体に
 塗られる甘みをおさえたクリームと
 細かいおろし金で削られたホワイトチョコレート
 が、一面に振りかけられて
 まるで遠い北の森の氷花を思わせる
 忘れられないデコレーション

 「ノリコちゃんをイメージしたのよ。」
 毎年はそんな事をしなかった祖母からの贈りもので
 不思議だった

 後になって、あのケーキが特注だったことを知る

 祖母がケーキをくれた年の晩秋
 国道沿いのバス停から山手の高台にある総合病院、
 呼吸器科の病室へ
 祖母を見舞いに行く私がいた
 
 ビニール傘を開こうともせずに
 濡れながら歩いた
 小雨降る 暮れ方の道
 そうして
 祖母は間もなく帰らぬ人となった。


戻る   Point(5)