※一部地域を除く/ゼッケン
 
るのか?
声には出さない
男は一歩こちらに踏み出す
おれは身構える
荷物よこせよ、配達員
男は片手を差し出す
おれは男に荷物を渡す
伝票にサインを求める
おとこがペンを握って視線を落とした時、その脇を縫って靴のまま廊下に上がりこむ
おれは怒りに駆られていた
この住宅地は高齢者ばかりで一人住まいも多い
おれは配達をしながら安否を確認し、ときには世間話もする
おれは住人に感謝されており、ただの配達員以上の存在となった自分に満足した
侵入者である男に主人を名乗らせはしない
おばあちゃんは居間に敷かれた布団に横たわっていた
ごめんなさいね、わたし、もうすぐ逝っちゃうみたい

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