相合橋/リリー
 
 にこやかに前を歩く私の後ろから着いてきてくれる
 あなたの足取りはまるで
 デパートの屋上へ遊具目当てにやって来る幼児の父親

 やっぱり、ここからが一番綺麗なのよ!
 自慢げに私がそう言って 橋の中ほどで並び立ち
 道頓堀川に架かる大黒橋の方を向く

 二人で すごすみじかい宵を照らす川面のシャンデリア
 漂いはじめた夜の香りに煙草くゆらせる あなたは
 短くなった一本おさめる携帯灰皿を上着の懐に蔵う
 そろそろ 行こうか
 何が食べたい?
 灯 を見つめたまま呟いた

 そうして この橋を一度ならず二度までも渡ってしまう

 あなたの声、手のぬくもりも
 再びは もどり来ぬと
 過ぎた冬の深さを歎いてもみた
 たとえ、離れていても あなたの住う空の下

 別名 「縁切り橋」と分かっていて渡る男女も
 いるかもしれないが、
 わたしたちはそうではなかった。


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