パパ、パパ、パパ、/ゼッケン
 
殺人を犯そうとしている
シャベルを肩に担ぎ直すと歩きだした
警察へ

一度だけ振り返った
塀を隔てた隣の家の二階の家の窓にはカーテンが下りている
いつかお前がふたたび顔を見せてくれることを願う
お前が生まれて育った家だ
おれはずっと見てきた
家族とは血縁や性別ではない、果たすべき機能があるだけだ
おれは父親であろうとした
そのことをおれは誇りに思う
東の方向が濃いすみれ色となり、やがて曙光が射す
愛しき家族たち
さらば、さらば、だよ
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