五月雨/リリー
 
 真四角の建物の谷間
 冷たい雨が、
 寄り所ないコンクリートの壁に爪を立てて
 のぼり始める
 赤く黒く
 その身をやき尽くそうとして
 一足一足いらだたしげに登り始める
 
 どこからか
 高層マンションのベランダに吊るされる風鈴が
 夜気に溶け込み
 例えれば雑兵として生きる僕の見つけた幸せの様で
 余りに はかない
 雨の公園
 玩具のスコップでせっせと砂場に穴を掘り続ける
 まあ それでよいのだ

 国道沿い、歩道脇に並び立つ人
 長い赤信号が青に変わると進み始める傘の列が
 会社の敷地囲う生垣を伝う
 今朝もまた

 雨 が止んだら

 道端 濡れたタンポポの綿毛のような僕、
 四角く縁取られた五月の空に
 舞い上がれ


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