空を見上げる/岡部淳太郎
 
 空を見上げるのが好きだ。全天が雲で覆われている時以外は、外に出ると必ずといっていいほど、空を見上げる。普通の人はあまり空を見上げない。時にはうつむいて歩いていることもある。空を見上げるのが好きな俺は、そんなに足下ばかり見て歩いていても、そうそうお金が落ちているわけでもあるまいになどと思うのだが、彼等は相変らずうつむいて歩いている。ある者は手元の携帯電話を見ながら、ある者は視線を地面にさまよわせて、猫背で歩いている。
 空を見上げながら歩くことは姿勢を良くするのに効果がある、というのは冗談だが、そんなにうつむいてばかりじゃ、自らの半径1メートルぐらいまでにしか気が回らなくてよくないのではないかと
[次のページ]
戻る   Point(2)