春雨/リリー
 
 歎くべきだっただろうか

 みずいろの空が
 私の上に落ちかかって来るのを感じた時
 心は
 果のない
 重量感のない
 依リ所のない
 空の中に巻きこまれて
 小さなわたしが
 どうして歎きなど出来るだろう
 あらゆる神経を弛緩させて
 甘んじて その中に喜んでいただけだった

 淡いパープルに白のマーブル模様がやさしくて
 ちょうどMサイズの たまごに似てる
 その花
 ただ並んで在るのではない二本は
 そっと顔を寄せあい語っている
 空の香の中に溺れてしまった
 以前と
 何も変わることがなかったのだ

 傘もなく
 濡れながら
 見る、チューリップ


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